開発: 地域振興活性化事業推進委員会 「健康をテーマにした下駄」部会
井田陽三、沖 貞明、原田碩三、田中始男、坂井則夫、堺谷淳夫、岡野  仁、皿谷邦彦
実験: 広島県立保健福祉大学理学療法学科
沖 貞明、金井秀作、大塚 彰

 靴による足の障害は古くから欧米に多く、長時間の靴の使用が原因の大部分を占めていると言われています。本邦においても生活の洋式化に伴い、不適切な靴の使用が大きな要因と考えられる外反母趾などの疾患が増えてきています。日本では古来より下駄、草履などの鼻緒のついた履き物が使用されており、足のトラブルははるかに少なかったことを考えると残念なことです。
 本来、人間の足は裸足で歩くようにできています。しかし、屋外を裸足で歩くことは非現実的です。そこで、人間工学的な見地から、足の健康に最も寄与できる形態の下駄の検討を行いました。


 
 成人を対象に検討しました。
1)裸足歩行に近い下駄の形状は? -足底圧による検討-
   Fスキャンという足底圧を測定する機器を用い、裸足及び履き物を履いたときの足底圧を計測しました。青い色は圧が低い、赤色は圧が高いことを示しています。赤い線は足底圧中心の推移を示しています。  
(1)裸足歩行
   裸足歩行では最初に踵に体重がかかり、足の少し外側を通り、踏み返しの際は趾先部までよく体重がかかっています。

裸足歩行の足底圧(449KB)
(中には、後に述べる靴歩行のようなパターンで歩く方もおられます)
 
 
(2)靴歩行(履き慣れた革靴を使用)
 
   最初に踵に体重がかかり、足の少し外側を通るところまでは裸足歩行とほぼ同様ですが、多くの人において踏み返しが弱く、趾先部まではあまり体重がかからない傾向がみられました。

靴歩行の足底圧(610KB)
裸足歩行と異なり、足の裏全体で荷重するため足部にかかる圧は減少し、赤色はほとんどないことが特徴です。
 
 

(3)どんな下駄なら裸足歩行に近いか?

 
  ●下駄の底は、どのような形状が良いか?
下駄の上面は、どのような形状が良いか?
  (昔ながらのフラットなものが良いのか、革靴の中敷きの傾斜に近いカーブが良いのか?)
●踵はどのくらい高くするのが良いか?

下駄歩行の足底圧(449KB)
測定に使った下駄(449KB)
以上の3つの点について検討し、様々な条件での実験の結果、"裸足歩行とほぼ同様な踏み返しを伴ったパターン"を容易に再現して歩ける下駄の形状は、"下駄の底には踏み返しが容易になるようなカーブをつけ、踵を前足部よりわずかに高くし、下駄の上面をフラットにした下駄"ということがわかりました。
 

2)下駄が裸足よりも良いところは?
   外反母趾の項で述べましたように、外反母趾の治療としては母趾外転筋を強化する治療体操が行われています。下駄を履くと、この母趾外転筋はどのような活動をするのかを知るために、表面筋電図測定という方法で筋肉の活動状況を見てみました。
 その結果、靴よりも裸足、裸足よりも下駄(今回開発した下駄)のほうが母趾外転筋はよく活動している(よく使っている)ということがわかりました。
 
図1 踵がついてから足趾が離れるまでの拇趾外転筋活動
クリックすると拡大されます。
   すなわち、健康下駄による歩行には、"母趾外転筋に対する訓練効果"があるということです。  

3)まとめ
"靴"は足を保護する
 
足趾の筋肉をあまり使わない 筋肉が衰えやすい:足には不健康
ただし、長距離を疲れずに歩くには良い
接触面積が広いため、うまく適合させた靴なら痛みがでにくい(足の障害を既に持つ人には有効)
 
 
"健康下駄"は足を鍛える
 
 
足趾の筋肉をよく使う 筋肉が鍛えられる:足の健康によい
ただし、長時間使用は辛い(慣れが必要、鼻緒ずれに注意)
裸足歩行に近い歩行が可能
裸足歩行でも痛みがあるような"既に足に障害を持つ人など"には向いていない
 

 
 人間工学的な検討の結果、 "裸足歩行を再現し、足趾を鍛える下駄"を開発することができました。
図2 健康下駄
クリックすると拡大されます。
下駄歩行(10歳児)の足底圧(776KB)
 小児の場合は動きが活発なため、容易に踏み返しをしながら歩くことを考慮し、前足部と踵の高さを同じに揃えました。この下駄を履いた10歳の児童の足底圧を示します。成人と同様に、裸足歩行のパターンで歩いているのがわかります。
 この下駄を履くことにより、屋外においても裸足で歩いているような正常のパターンで歩くことができます。そのためには、前足部底面のカーブを使うように踏み返しをしながら歩くのがポイントです。足趾の筋肉を鍛えることもでき、足の健康にとても良い履き物といえると思います。

これらの下駄は、ショッピングページの健康下駄コーナーで購入できます。男物女物子ども物をご用意しております。


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