羽織る、巻く、重ねる、結ぶ、構築的な服の厳格さと違い、やさしく体にまとう服にはトングサンダルが似合う。太い鼻緒はエキゾチックな赤いかすりがおしゃれ。  





「ファッションは 社会との関わり の中で変化する。
ファッションも グッズも靴、 バッグなどの単独ではなく社会や文化との関わりの中で考えていきたい」
(有)スタジオ・レイ 代表  コーディネーター  鈴木玲子

実用からやがて粋に、洒脱に、華やかに日本のはきものの原点である下駄

柾目の通ったお父さんの下駄
塗りのおしゃれ履きはお母さんの下駄
白鼻緒の高下駄はお兄さん
あした天気になぁ〜れも下駄
竹久夢二の黒猫を抱く女の下駄
小泉八雲は下駄の音に、日本を感じた
海老茶の袴に編み上げブーツは大正時代の女学生 下駄は靴に追いつかれ、追い越され、新しいコーディネートの模索の時代

リラックス志向・健康志向へとファッションはリアルクロージングの時代へと様変わりし、靴から開放された足・地面を蹴る指・下駄はトレンドを意識して、ネーミングもトングサンダル・リラックスサンダルに変わり、洋服とのコーディネートによって健康とファッションの両面から世界中に強いメッセージを送るアイテムになった。


 経済の失速、民族紛争、統合、分裂と、世界を取り巻く環境はますます厳しく、ファッションはその環境の中で改めて個の重視が注目されている。個性化によるカスタマイズされた製品の話題と増加、反面マスマーケットではエージレス、シーズンレスの製品を定着させている。
 成熟した社会の中では、人生・生活など自己実現の欲求は、ファッションにおいてはシーンに応じた自分を演じ分けようとし、劇場空間における自分をクローズアップすることになる。
 豊かな日常をつくりだす意識、自分の心を、ファッションによってある時は刺激し、ある時は鎮静するなど精神生活まで満たす役割をする。豊かさの基準は経済的な価値ではなく、モノやクリエーションに対して感じること、選択能力、それらをパーツとしてとらえ、ライフスタイルを組み立てていくことにある。実用とファッションという矛盾こそが価値であり、その矛盾を美におきかえることがファッションと云えるものである。
 ファッションは洗練された感覚を維持しながら、ラジカルな対立の組み合わせを巧みに操り、バランスをとる意識が働く。ここしばらくは、ハイテク/ローテク/エレガンス/カジュアル/伝統/モダン/粗野/洗練/大人/子ども/男/女 など、異なる要素がミックスされながら新鮮な商品を提案することになる。本来労働着の素材であるデニムがカジュアル素材になり、この1・2シーズンは刺繍が入り、レースと組み合わせたものも多い。トラディショナルなディテールである、ピンキングカットのミュールサンダルはまさに男と女のミックスであり、ハイテクスニーカーにハンドステッチのデザインは消費者には暖かみを感じさせるものである。
 
今シーズンの傾向をあげると
ブリティッシュスタイルが持つ伝統的な気品の再構成。ユーモアやウィット、シニカルな視点によってポップなセンスも浮上   エレガンスの新たな境地。こびることなく、あくまでも孤高な美、ストイックな装飾性   快適性と美しさの追求の中に日常性を浮上させるシーン。機能美とデザイン性に対する融和/調和のデザイン
 

 これからの下駄に求められる要素は、洋服とのコーディネートの視点である。何を着、何を履くか、すべてをコーディネートし自分らしさのスタイリングを完成させる消費者には、リラックスと健康の両面からの商品提案こそがキーポイントになる。
 しかしファッションは感覚の世界であり、情緒的なものでもある、今、何が新しいか、そして楽しいかを常に求められるものである。色・素材・ディテールまで時代性が求められる。
 下駄はデザインソースではあるが、消費者はサンダルとしてコーディネートする。下駄はすでにグローバルな視点で、ファッションショーの場面に登場し、諸外国からもっとも新しく、健康なはきものとして注目されている。



鈴木玲子プロフィール

1958年
文化服装学院デザイン科卒
(株)リリー製靴、チヨダシューズ(株)、商品企画室勤務を経てフリーとなる。
1965年

TPAS(トータル・プランニング・アトリエS)を主宰
靴業界、並びに皮革産業関連グッズ業界においてコーディネーターとして指導に当たる。
その間、通産省、業界主催の靴コンクールなどの審査員を委嘱される。
また、東京都中小企業振興事業団より委嘱を受け、デザイン教育等を担当。

1980年 文化服装学院ファッション工芸科講師として、靴、皮革関連グッズの企画、制作の教育を担当。
1986年 企画事務所『studio ray』設立
(財)日本はきもの博物館(現(財)遺芳文化財団)「開館10周年記念」行事に監修者としてプロジェクトに参加、年代別の靴、レプリカを製作、その他、展示用サンプルの作成。
日本皮革産業連合会デザインコンクール審査員。
日本ケミカルシューズ工業組合デザインコンクール審査員。
台東区創作コンクール、デザイン画コンクール副審査員長。
靴メーカー、靴問屋、専門店等の企画実務に参画、指導。
皮革関連産業の集中する台東区地場産業推進協議会が主催する「台東産業フェア」コーディネーターとして、靴、鞄バッグ、ベルト、帽子等各業界と関わり、デザイン指導。
東京都の委託により製靴 技術検定試験委員。
東京都能力向上訓練講座(企画、デザイン基礎コース)の講師として長期に亘り担当。


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